税金を期限までに支払わない場合、税金滞納の状態となります。税金の滞納期間が長期にわたると財産が差し押さえられてしまいます。
では、差し押さえはどのような流れで行われるのでしょうか。
今回は、税金滞納時の差し押さえの流れと、支払えないときの対処法を解説します。
税金滞納とは
税金を滞納するとどのような状態になるかをみていきましょう。
税金滞納になるとどうなるの?
税金は、支払いの期日を1日でも過ぎてしまうと滞納として扱われます。滞納した時点で滞納者となる点は知っておきましょう。期日までに納税ができなかった場合は、延滞税・延滞金が発生し、督促状が発布されます。
延滞税と延滞金
延滞税・延滞金は、国や自治体が税金の納付期限が過ぎて滞納した場合に課せられる罰則金のことです。延滞税は国税、延滞金は地方税に関して支払うものとなります。
延滞税・延滞金は、次の計算式で計算を行います。
税額(延滞している期別ごとの金額)×(延滞日数(納期限翌日から納めた当日までの日数)×延滞金率)/365=延滞金額
延滞金率に関しては次のようになります。
期間 | 基準割合 | 特例割合 | 令和6年中の割合(延滞金特例基準割合1.4%) |
・延滞金:納期限翌日から1カ月を経過するまで ・延滞税:納期限翌日から2カ月を経過するまで | 年7.3% | 延滞金特例基準割合+1% | 2.4% |
・延滞金:納期限の翌日から1カ月を経過した日以降 ・延滞税:納期限の翌日から2カ月を経過した日以降 | 年14.6 | 延滞金特例基準割合+7.3% | 8.7% |
※延滞金利は延滞税・延滞金も同じ割合です。※基準の利率と「延滞税特例基準割合(※1)+1%」のいずれか低い割合が適用※延滞金の割合は今後変更される可能性があります。
延滞金を納付期限後1カ月以内に納付した場合税額(延滞している期別ごとの金額)×(延滞日数(納期限翌日から納めた当日までの日数)×1カ月以内延滞金率)/365=延滞金額
延滞金を納付期限後1カ月以降に納付した場合税額×(最初の1カ月の経過日数×1カ月以内の延滞金率)/365=最初の1カ月の延滞金額
税額×(1カ月以降の経過日数×1カ月以降の延滞金率)/365=2か月目以降の延滞金額
最初の1カ月の延滞金額+2カ月目以降の延滞金額=合計の延滞金額
延滞金の計算例延滞税・延滞金の計算時は須知のような端数処理を行います。※計算過程で金額に1円未満の端数が生じた場合は切り捨て※計算後の延滞金額に100円未満の端数がある場合は切り捨て、延滞金額が1,000円未満の場合は全額切り捨て
納期限:令和6年1月31日税額:300,000円納付日:令和6年4月19日
①納付期限1カ月以内経過日数:(2月1日~2月29日の29日間)②納付期限1カ月以降の経過日数:(3月1日~4月19日までの50日間)
①税額(300,000円)×(29日×2.4パーセント)/365日=571.8円端数処理により571円
②税額(300,000円)×(50日×8.7パーセント)/365日=3,575.1円 端数処理により3,575円
①571円+②3,191円=4,146円
端数処理により延滞金4,100円
延滞税・延滞金の計算方法は同様で、違いは延滞金率が適用される期間です。
督促状の発布
税金の滞納が続いている場合は、督促状が発布されます。国税は原則として納期限から50日以内、地方税は原則として20日以内に滞納している方に送付されます。
財産の差し押さえとは
財産の差し押さえの対象になるもの、実際に差し押さえられるものについてみていきましょう。
財産の調査
督促状を送付しても納税されない場合、差し押さえる財産を決定するために、滞納者や関係者の住居に対し相手の意思に関係なく調査が行われます。場合によっては金融機関や勤務先に税金滞納の事実が知られるなど社会生活に影響を与えるリスクがある点は知っておきましょう。
財産の差し押さえ(給与債権・預金債権・賃料債権・不動産・動産など)
差し押さえの対象になる財産は次の通りです。
・給与債権給与に加え賞与や退職金も対象です。債権が差し押さえられる際には、勤務先に連絡されます。
・預金債権普通預金や定期預金、当座預金などが差し押さえの対象です。預金を差し押さえられた場合は、預金口座が凍結され自由に入出金ができません。また、差し押さえの時点で残高から未納分の税金相当額が徴収されます。
・賃料債権債務者がアパートやマンションを経営している際に受け取っている賃料も対象です。差し押さえとなった際には、賃借人にも税金滞納が知られることになります。
・不動産土地や建物などの不動産は財産的な価値が高く、高額な債権回収が期待されるため、差し押さえされやすい財産です。
・自動車自動車登録ファイルに登録されている自動車が差し押さえの対象となります。自動車登録ファイルに登録されていない自動車や軽自動車に関しては、自動車執行(自動車に対する強制執行)の対象外です。
・動産動産の差し押さえは、滞納者の自宅や店舗に執行官が訪れて行われます。不動産を未所持の場合、動産が差し押さえられる可能性が高いといえます。自動車執行の対象とならない自動車は、基本的には動産執行の対象です。
財産の差し押さえにならないものはあるの?
差し押さえの対象にならないものは、人間として最低限度の生活を送るのに必要な財産です。差し押さえの対象外となる財産として、次のようなものが挙げられます。
衣類
寝具
家具
台所用具
3カ月分の食料や燃料
滞納者や家族の教育・学習に必要な器具や書籍
仕事や生計を立てるために必要な道具や器具
また、借りている住宅など債務者本人が所有していない財産は差し押さえの対象とはなりません。
財産の差し押さえを避けるためにできること
財産の差し押さえを避けるために利用できる方法や制度をみていきましょう。
分割返済を相談
税務署は支払いの意思があるのに資金がない人に対しては、有無をいわさず差し押さえを行うことは少ないといえます。そのため、どうしても税金の支払いが困難な場合は、税務署や役所に相談しに行くことが大切です。
相談によって、分割返済に対応してもらえることがあるため、支払いが難しい理由や返済計画について素直に説明しましょう。
納税の猶予制度を利用しよう
税金の支払いについては納税猶予制度が設けられています。この制度を利用するためには、税務署への申請が必要です。
この制度には税金の納付期限を伸ばしてもらえたり、分割払いに対応してもらえたりする換価の猶予、税金を納付することができないときに1年間の猶予が与えられる納税の猶予があります。
税金の支払いが厳しい場合は、こうした猶予制度を利用しましょう。国税の納付が難しい場合には、所轄の税務者や国税局電話相談センター、地方税の納付が難しければ自治体役所の税務課窓口に相談しましょう。
国税の猶予制度
国税の猶予制度は、期限内の納付が困難な場合に、申請で税務署長の許可を受けて原則として1年以内の期間に限り、分割納付が行える制度です。国税(換価)の猶予を受ける際には、次のような要件を満たさなければなりません。
一時に納付すると・事業の継続・生活維持が困難になる恐れがある
納税について誠実な意思がある
納期限から6カ月以内の申請
猶予を受ける国税以外に滞納がない
原則として、担保の提供がある
納税の猶予を受ける際には、次のようなケースに該当する必要があります。
①納税者本人が財産について災害などを受け、または盗難にあった②納税者本人または生計を同じにるす家族が病気にかかった③納税者が営む事業をやむを得ず休廃業した④納税者が営む事業が利益の減少などで、著しい損失を受けた
①~④のケースがあることで、一時に納付できない
申請を行っている
原則として、担保の提供がある
場合によっては、担保がなくても制度を利用できる場合があるため、相談してみましょう。
地方税の猶予制度
市税を一時に納付できない場合、「換価の猶予」及び「徴収猶予」が利用できる場合があります。換価の猶予を受ける際には、次のような要件を全て満たさなければなりません。
納税について誠実な意思が認められる
換価の猶予を受ける市税以外の滞納がない
納付すべき市税の納期限から6カ月以内に申請書が提出されている
原則として担保の提供がある
徴収猶予を受ける際には、次のようなケースに該当する必要があります。
①財産について災害などを受けたとき、または盗難にあった②納税者本人または生計を同じにする家族が病気にかかった③事業をやむを得ず休廃業した④事業が著しい損失を受けた
①~④のケースがあることで、一時に納付できないと認められる場合
申請書の提出を行っている
原則として、担保の提供がある
地方税について支払いが難しい場合には、早めに市町村窓口に相談しましょう。
不動産を担保に資金調達する
税金を滞納している状況では、銀行や日本政策金融金庫などからお金を調達するのは非常に困難です。しかし、不動産担保ローンであれば、厳しい状況下でも、条件が合えば融資してくれる金融業者が存在します。
債務整理を行う
債務整理を行ったとしても、税金の支払い免除、税金滞納による差し押さえを留めることはできません。ただし、ほかの借金などが滞納原因の場合、債務整理をすることで回避できる可能性があります。そのため、弁護士などに相談してみましょう。
滞納処分の妨害は刑罰の対象になる
納税を避けるために財産の隠蔽、損壊したり価値を減少させたりする行為は懲役や罰金などの刑罰の対象になります。そのため、滞納処分を避けるための対策を行うことが大切です。
まとめ
税金を滞納し続けた場合、延滞税や延滞金の支払いに加え、財産が差し押さえられる可能性があります。財産の差し押さえを避けるためにも、督促状が届いたらそのままにせず早めの対応が大切です。
分割納付の相談や猶予制度の利用といった対策を行い、財産の差し押さえを避けつつ、税金を納められようにしましょう。
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